学生の頃、仙台の一番町に「ウィーン」というクラシック喫茶があってよく通ったものだ。お目当てはLD (レーザーディスク) かVHDで上映される音楽映像だった。今でこそDVDの音楽ソフトが1,000円くらいから買えるようになり、DVD再生ソフトもわずか数千円、YouTubeだったらタダで動画が見られるようになったが、当時はそんな安くて便利なものはなかった。懐の寂しい学生にとっては、「ウィーン」のようなクラシック喫茶で見られる音楽映像はすごくありがたいものだった。ただバレエ「ジゼル」とか、僕にはあまり興味がない演目も多く、そんなときはあきらめて店を出るか、ブレンドコーヒーを飲みながら本でも読んで時間をつぶしたものだった。
その当時、一番気に入ってた演目の1つがカール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団のブランデンブルグ協奏曲だった。曲もさることながら、ヴァイオリンのオットー・ビュヒナーのなめらかで端正なボーイングは何度見ても飽きなかったものだ。まるで機会仕掛けの人形のようで、正確で几帳面なドイツ人の権化のようだった。このリヒターの、というか僕にとってはビュヒナーのブランデンブルグ協奏曲はVHDしかなく、ほどなくして「ウィーン」もなくなってしまったため、見ようにも見られなくなってしまった。そのうち仕事も忙しくなってしばらく忘れていたのだが、先日偶然DVDでも発売されているのを発見してうれしくなってしまった。