张艺谋について言えば、それ以前にも《红高粱》とかいくつか映画を観ていたし、その後に観た《活着》や《有话好好说》、《一个都不能少》とかも結構面白かった。ただ、この《幸福时光》ほど何度もくり返し観た映画はない。というか、そもそも何度もくり返し観た映画なんて张艺谋に限らずほとんどない。そういう意味で、これは単に好きというだけでなく、僕にとってはちょっと特別な映画だ。
《幸福时光》で一番印象的なシーンは、全編のちょうど真ん中あたり、主人公の盲人の少女"吴颖"(董洁)とニセ社長の"老赵"(赵本山)が街中で道の片端に座ってアイスを食べるところ。カネのない老赵は初めハーゲンダッツ風の店でアイスクリームを買おうとするがあまりの高価さに手が出ず、結局屋台で安いアイスキャンデーを買って吴颖に渡す。自分の分はない。2人はそのまま歩道の段のところに腰掛けて、吴颖だけがアイスを食べ始める。前や後ろでは、会社や学校帰りの人が行き交っている。目の見えない吴颖は老赵に訊く・・・ 「人はいっぱいいるの?」「いっぱいいるよ」「みんな何してるの」「勤め帰りだな。子供連れで買い物している人も」・・・母親と死別し、実の父親と養母にも半ば見捨てられた吴颖は、ここで初めて硬いガードを崩して打ち解けていく、、、
このシーンは映像の美しさもさることながら、三宝(という名前の作曲家です)の音楽がこれまたひどく繊細で美しい。この映画を何度もくり返し観たのは、今から思えば半分はこのシーンを観たいがためだったような気がする。
三宝の音楽があまりに気に入ったので、その後中国に行ったときに三宝の映画音楽を集めたCDも買って来た。《三宝影视歌曲 直接影响》というのがそれで、IとIIがあり、それぞれ2枚組みで合計4枚。《幸福时光》はIの方に2曲収められている(上のシーンとラストのシーンの曲)。
ちなみにこのCDのジャケットには、三宝が音楽を担当した映画のシーンがいくつか使用されていて、《幸福时光》の上記のシーンもそのうちの1つである。意味もわからないくせに私と一緒によく《幸福时光》を観ていた4歳の息子はこの写真を一目見て曰く、「アイスクリームが違う!」 後日、映画をもう一度観てみると、確かにCDの写真と映画では食べているアイスクリームの種類が違っていた。映画はいわゆるアイスキャンデーだが、CDの方はサーティワンみたいなコーン付きのアイスクリームになっている。子供の記憶力はスゴい。



