とは言うものの、よくよく考えてみると19歳のときにモーツァルトを聴いて以来、一部の映画音楽とかを除けば基本的にクラシックだけ聴いていたので、日本のポピュラーな音楽を聴くのはじつに20年ぶり、中森明菜どころか日本のポピュラーな音楽に関する知識はゼロだ。「SHAKER」は10年前のアルバム(発売は1997年)であるにもかかわらず私の耳にはわりと洗練されている感じに聞こえるが、それが本当に洗練されているのか、それとも単に僕が20年遅れているだけなのかはわからない。ま、とにかく何か書かずにはいられないので、内容はどうであれ書いてみる。
*** SHAKER ***
サウンドは全体的に硬質でザラっとした耳ざわり。電子音も多用。リズムの強調された、金属的な乾いたドラムとバス。これに中森明菜のヴォーカルが加わる。地声を前面に出して歌いきるハードな歌唱と、息を柔らかく使ったソフトな歌唱を曲によって使い分けている。このほか曲ごとにアコースティックギター、エレクトリックバイオリン、アコースティックピアノ、胡弓、レコードノイズ、その他さまざまな電子音が入り、音作りが多彩で飽きない。
中森明菜の声は低音が効いていて痺れる。あるときは鋭く支配感をもって迫ってくる。あるときは心のひだをなぞるように、しっとりと歌う。
01. 満月
ちょうど埃のついたレコードを掛けたときみたいに、プツッ、プツッという(意図的な)ノイズ音がところどころに入っている。バラード系(って言っていいのか?)の曲だが、意外にも硬質なサウンドと、しっとりした声の対照が何とも印象的。曲の出だしを聴いて何故かMichael JacksonのThrillerを思い出した。
02. Spicy Heart
これも満月と同じく、切れのあるクールなサウンド+ソフトな歌唱の組み合わせ。ふくよかな声がときどきハスキーに掠れるところが何とも言えずセクシーだ。
03. 夜の匂い
これもしっとり系の曲だが、息遣いがはっきり聴こえるせいか、Spicy Heartよりもさらに声が艶かしい。他の曲と比べると前奏のつかみが弱いので、最初聞いたときは印象が薄かったが、聴けば聴くほど好きになる曲。特に「夜の匂いはいつしか~」からのところの低い声が、体がとろけそうになるほど美しい。つかみが弱いと思った前奏も聴きなれるとこれはこれで良いかなとも思う。
04. おいしい水
前3曲とは打って変わって地声を前面に出して歌っている。次からアップテンポの曲が続くので、この曲はいわばブリッジなのかな。
05. MOONLIGHT SHADOW ~月に吠えろ
ここからアップテンポな曲が続く。ハードなサウンド+ハードな歌唱の組み合わせ。このMOONLIGHT SHADOWは人気の曲のようだが、他の曲と比べるとわりと尖ったところのない、普通っぽい感じに聞こえる。それだけバランスが良いということなんだろうか。
06. 赤い薔薇が揺れた
題名から受ける印象とは裏腹に、完全にプログラミングされた酷薄なリズムの上でハードに歌う曲。明るいようで暗い不思議な作品だが、どこかアンバランスなところが逆に魅力的だ。
07. APPETITE ~ HORROR PLANTS BENJAMIN
「あいつの二酸化炭素が食べられる」とか、妙な歌詞だと思ったら、主人公が観葉植物のベンジャミンという設定になってるらしい。タイトルがAPPETITEというのもすごい。そう言えば、Hall & OatesのManeaterなんて曲もあったが。ベースのリズム、ブラス、ヴォーカル、すべて文句なしにカッコいい。一番好きな曲。
08. 夢見るように眠りたい
左右2本のギターのデュオで西部劇のように静かに始まる。それからエレクトリックバイオリンが切り込むように入り、それからヴォーカル。この出だしはすごくいい。歌も初めは低音で抑え気味に、サビの手前から強烈なビブラートで一気に駆け上がる。歌唱も強烈だが、バックのギターとバイオリンも鮮烈なので、中森明菜の声ばかり追いかけて聴いてもいられないというスゴい曲。
09. 桜(びやく)
冒頭のソロは最初はバイオリンにミュートをつけてるのかと思ったけど、どうも音色が違うのでジャケット(歌詞カード?)を確かめてみたら胡弓(たぶん二胡ですね)だった。胡弓の入った曲を聴くのは「ラストエンペラー」のサントラ以来じゃないだろうか。最近のポップスではけっこう普通に使われるのか?胡弓のせいかどうかわからないが、この曲は本アルバム中ではちょっと異色な感じがするが、落ち着いた感じの佳曲でこれも大好きな曲。「桜ふぶき」と歌うときの「ぶ」の発音がなぜか印象的でもう一度聴きたくなってしまう。
10. 風を抱き締めて
初めは、この曲とボーナストラックの最後の曲「SWEET SUSPICION」はどうもこのアルバムの雰囲気に合ってないような気がしていつもすっ飛ばしていたけれども、こうして改めて聴いてみると、それほど悪い曲でもない気がしてきた。あとタイトルは「風を抱きしめて」の方が良い気がする(「締める」ってちょっとキツい感じが・・・)。
11. 月は青く
1曲目の満月と同じように、レコードのノイズが入っている。つまり、これが最終曲ってこと。あとボーナストラックがあるけど、最初にリリースされたときはここで本当に終わっていたはずだ。こうしてみると、最初の3曲がしっとり系、4曲目をブリッジとして5曲目から8曲目がアップテンポでパワフルな曲、9曲目から11曲目で熱を落とす、という構成でなかなか考えられた曲順になってる気がする。そんなことにお構いなくランダム再生でわざわざ曲順をメチャクチャにして聴いていたが、、、(曲順を固定して聴くと早く飽きが来るような気がするので・・・)。タイトルは「月は蒼く」よりも「月は青く」を選んだんだろうか?
ボーナストラックは省略。最後に現時点での好きな曲順を書く。まぁ好きな曲は毎日変わるんだけど、とりあえず今はこの順。
1. APPETITE
2. 夜の匂い
3. 夢見るように眠りたい
4. 桜(びやく)
5. 満月
6. 赤い薔薇が揺れた
7. Spicy Heart
8. MOONLIGHT SHADOW
9. おいしい水
10. 月は青く
11. 風を抱き締めて
12. SWEET SUSPICION