CDを買おうとしたのだが、オードリー・ヘプバーンは歌手ではないからCDは映画のテーマソングを寄せ集めたようなものばかりでちゃんとしたものがない。だからサラ・ブライトマンのを買った。『La Luna
で、しばらくサラ・ブライトマンを聴いていて、それはそれで満足していたのだけれど、そのうちに何か物足りない気がしてきて今度はアンディ・ウィリアムズのを買ってきた。だけどこっちはただのムード音楽にしか聴こえなくて受けつけなかった。
それで次にインターネットを探し回ったら、オードリーが歌ったムーンリバーのMP3が見つかった。ダウンロードして聴いてみると、今度はぴったりだった。映画から音源を取ったらしく、タイプライターを打つ音とかの背景音が入っていたりして、音自体は良くない。オードリー・ヘプバーン自身、歌手は本業どころか副業ですらないだろう。それでも、クリアな音源でプロ中のプロのサラ・ブライトマンが歌ったものよりもしっくりくるのだから不思議なものだ。
トルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』はちょっと独特な雰囲気のある小説で、主人公のホリー・ゴライトリーは快活で奔放ながらも、どこかしら不安定で非現実的な感じのする女性だ。オードリーが歌うムーンリバーは、はっきり形を取っては現れないけれども、物語の基底にあるそうした微かな不安ともせつなさともつかぬ感情をすくい取って表現している。
インターネットからダウンロードしてきた、いささか怪しげなオードリーのMP3は今も持っていて、折に触れて聴く。聴くたびにいつも、胸がしめつけられるような気分になる。
